ローマ字入力・JIS かな入力と新月配列を比較する

打鍵数・指の移動・学習コストの観点から、前置シフト方式の新月配列が従来の日本語入力方式とどう違うのかを整理します。56 方式の統一ベンチマークの数値つき。

はじめに

日本語をキーボードで入力する方法は、大きく「ローマ字入力」「JIS かな入力」、そして本サイトで紹介している「新月配列」に分けられます。 新月配列は月配列2-263をベースにした前置シフト方式のかな配列です。この記事では、それぞれの仕組みを 打鍵数・指の移動・学習コスト の観点から比較します。

数値は 2026-09-13 に実施した日本語入力 56 方式の統一ベンチマークから引用しています。

3 つの入力方式の比較

観点ローマ字入力 (QWERTY)JIS かな入力新月配列
かな 1 文字あたりの打鍵1.71 打(清音で概ね 2 打鍵。例: か = k+a)1.21 打1.34 打(高頻度 1 / 中頻度 2 / 低頻度 3)
推定時間/かな(小さいほど速い)3.1953.0061.887
56 方式中の順位52 位45 位12 位
入力方式ローマ字をかなに変換かなを直接打鍵前置シフト(☆・★ を打ってから文字を打つ)
使用するキー範囲英字 3 行 + 数字段数字段を含む 4 行に分散(50 キー)英字 3 行(30 キー、現行版は 32 キー)
ホーム段比率32.9%21.4%55.7%
小指の負担14.5%34.2%9.9%
学習コスト低い(多くの人が習得済み)中程度新しい配列のため要習得
導入のしやすさ標準で利用可能標準で利用可能Karabiner-Elements / hazkey で導入

推定時間は打鍵時間モデルによる計算値で、実際にタイピングした計測ではありません。絶対値に物理的な意味はなく、方式間の比だけを読んでください。測り方はベンチマーク記事の「どう測ったか」を参照してください。

新月配列の「前置シフト」とは

新月配列は、シフトキーを押しながら打つのではなく、先に ☆ または ★ キーを打ってから文字キーを打つ前置シフト方式です。月配列譲りの仕組みで、打鍵数は文字の使用頻度に応じて変わります。

  • 高頻度の文字: そのまま 1 打鍵
  • 中頻度の文字: ☆ または ★ → 文字 の 2 打鍵
  • 濁音・半濁音・小文字(低頻度): ☆ →(濁音・半濁音・小文字)キー → 文字 の 3 打鍵

「すべての文字が 1 打鍵」というわけではなく、よく使う文字ほど少ない打鍵数に割り当てることで、文章全体の平均打鍵数を抑えるのが設計の狙いです。

ローマ字入力との違い

ローマ字入力は習得者が多く、特別な設定なしに使える点が最大の利点です。 一方で、清音であっても「か」に k+a の 2 打鍵が必要になるなど、かな 1 文字あたりの打鍵数が増えがちです(1.71 打/かな)。

新月配列では高頻度のかなを 1 打鍵で打てるうえ、頻出かなをホームポジション周辺に配置しているため、指の移動量を抑えられます(ホーム段比率 55.7% 対 32.9%)。

「ローマ字配列を変えれば追いつけるのでは」

追いつけません。ベンチマークでは Colemak・Dvorak・大西・DvorakJP を含む ローマ字系 20 通り以上 を評価しましたが、最速の大西配列(2.156)でも、かな系上位(1.74〜1.89)とは 15% 以上の差 がありました。短縮符号を足しても改善は 0.15% です。

英語向けの新配列に至っては、ローマ字入力では QWERTY より遅くなるものもあります(英語 1 位の Canary はローマ字で 3.317 と最下位)。詳しくは英語配列 17 種をローマ字入力で使うと何が起きるかをご覧ください。

JIS かな入力との違い

JIS かな入力もかなを 1 打鍵で打てます(1.21 打/かな は全方式中でも最少クラス)。しかし 46 文字以上のかなをキーボード全体(数字段を含む 4 行・50 キー)に割り当てるため、上段や数字段まで手を伸ばす必要があります。

その結果、ホーム段比率は 21.4%、小指の負担は 34.2% となり、打鍵数の少なさが指の移動量で相殺されます。ベンチマークでの推定時間は 3.006(45 位)で、ローマ字(QWERTY)の 3.195 とほとんど変わりません。

「打鍵数が少ない = 速い」ではない ことを示す典型例です。

新月配列は、かなを 30 キー(英字 3 行)に収め、前置シフトでホームポジション周辺だけで入力を完結させる設計です。濁音・半濁音・小文字は 1 つのキーに統合され、前置シフトで入力します。

新月配列のトレードオフ

新月配列は「平均打鍵数とホームポジション維持」を重視した設計ですが、いいことばかりではありません。

  • メリット: 高頻度文字を 1 打鍵に割り当て、ホームポジション維持、30 キーへの集約、ANSI キーボードだけで完結
  • デメリット: 中頻度・低頻度の文字は 2〜3 打鍵が必要。ローマ字入力からの乗り換えには学習コストがかかり、導入に専用ソフト(Karabiner-Elements / hazkey)が必要
  • 速さで言えば「1 位」ではない: 上位のかな系(新下駄・親指シフト・月見草・薙刀式など)とは同格グループの中にいて、有意差はつきません

「日々大量に日本語を入力する」「ホームポジションから手を動かしたくない」「JIS 余剰キーや親指キーのないキーボードで完結させたい」という人にとっては、学習コストを払う価値のある選択肢になります。

他のかな配列との比較

ローマ字・JIS かな以外のかな配列と比べたい場合は、以下をご覧ください。

まとめ

  • ローマ字入力は手軽だが、かな 1 文字あたりの打鍵数が増えやすい(1.71 打/かな)
  • JIS かな入力は 1 打鍵(1.21 打/かな)だが、キーが 4 行 50 キーに分散し小指負担が 34.2% に達する
  • 新月配列は前置シフトで、よく使う文字を少ない打鍵数とホームポジション周辺に集約する(1.34 打/かな、ホーム段 55.7%)
  • 推定時間ではかな系(1.74〜1.89)とローマ字系(2.15〜3.32)の間に 15% 以上の差があり、新月配列はかな系の側にいる

まずは導入方法から試してみてください。設定ファイルは GitHub リポジトリで公開しています。

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