新月配列 vs 月配列 2-263 — 単打面は同じ、違うのはシフト面とキー数
新月配列は月配列2-263 をベースにしています。統一ベンチマークでの推定時間は 1.887 対 1.892 でほぼ同値。では何が違うのか、単打面・シフト面・濁点の扱い・必要キー数の 4 点で整理します。
結論から
| 項目 | 新月配列(v8.6 現行) | 月配列 2-263 |
|---|---|---|
| 推定時間/かな | 1.887(12 位 / 56 方式) | 1.892(13 位) |
| 95% 信頼区間 | 1.879–1.900 | 1.883–1.905 |
| 順位範囲(15 条件) | 6–18 位 | 4–14 位 |
| 打鍵/かな | 1.34 | 1.30 |
| 使用キー数 | 32 | 33 |
| ハード要件 | ANSI(周辺キー [ ] を使用) | JIS の余剰キーが必要 |
| ホーム段比率 | 55.7% | 51.9% |
| 交互打鍵率 | 66.9% | 67.8% |
| 同指連続(SFB) | 4.8% | 4.7% |
速さの差はありません。 信頼区間も順位範囲も重なっており、統一ベンチマーク の基準では同格です。0.005 の差(0.3%)を「新月のほうが速い」と読むのは誤りです。
違いは速度ではなく 「どのキーボードで打てるか」と「規則の一貫性」 にあります。
1. 単打面は同一
新月配列は月配列 2-263 をベースにしており、1 打鍵で打てるかな(単打面)の配置は 2-263 とまったく同じ です。2-263 を打てる人は、新月配列の単打面をそのまま使えます。
これは新月配列を「新しい配列」ではなく 「2-263 の派生」 として位置づける根拠でもあります。実績ある月配列の頻度設計を、そのまま受け継いでいます。
2. 違いはシフト面・濁点の扱い・キー数
ち・れ・中黒の置き場
月配列 2-263 は ち・れ・・(中黒)を JIS キーボードの余剰キー(@ : _ に相当する位置)に置いています。日本語配列のキーボードでは自然ですが、ANSI(英語配列)キーボードにはこれらのキーがありません。
新月配列はこの 3 つを 30 キーの内側に収め直しました。現行版は「」の 2 つに [ ] を使うため 32 キーですが、ANSI 30 キーだけに閉じた案 も検証済みです。
濁点・半濁音・小書きの「1 キー統合」
新月配列は、濁音(゛)・半濁音(゜)・小書きを 1 つのキーに統合し、文字のあとに打つ後置 にしています。例外はありません。
- 濁音 = 清音 + ゛
- 半濁音 = 清音 + ゛゛
- 小書き = 親文字 + ゛
「どの濁音がどこにあるか」を個別に覚える必要がなく、清音の位置さえ覚えれば濁音・半濁音・小書きは自動的に決まります。学習コストの実体は単打面 + 前置シフト 2 面に閉じます。
キー数
新月 32 キー、2-263 は 33 キー。ただし決定的なのは数ではなく 種類 で、2-263 の 33 キーには JIS 固有のキーが含まれます。ANSI キーボードでは 2-263 をそのまま打てません。
3. 打鍵数は新月のほうが多い
新月 1.34 打/かな に対し、2-263 は 1.30 打/かな。新月のほうが 3% 多く打ちます。
理由は、2-263 が JIS 余剰キーに逃がしている ち・れ を、新月が 30 キー内のシフト面に移したためです。単打だったかなが 2 打になっている分が、この 3% です。
それでも推定時間がほぼ同じになるのは、新月のほうがホーム段比率が高い(55.7% 対 51.9%) ためで、打鍵回数の増加を指の移動量の減少が打ち消しています。
なお順次打鍵・30 キーの理論下限は 1.27 打/かな なので、新月(1.34)も 2-263(1.30)も下限から数 % の帯に入っています。詳しくは ANSI 30 キーの理論下限 を参照してください。
4. どちらを選ぶか
| こういう人 | おすすめ |
|---|---|
| JIS キーボードを使っていて、既に 2-263 を習得している | 2-263 のまま。乗り換えても速くなりません |
| ANSI(英語配列)キーボードを使っている | 新月配列。2-263 は JIS 余剰キーを要求します |
| 濁音の位置を個別に覚えたくない | 新月配列。後置シフトに例外がありません |
| キーボードを持ち歩く / 複数台で同じ配列を使いたい | 新月配列。ANSI で完結するため環境差が出にくい |
新月配列は「2-263 より速い配列」ではありません。「2-263 の頻度設計を、ANSI キーボードと例外のない濁点規則の上で成立させたもの」 です。
データと再現方法
数値は日本語入力 56 方式の統一評価(2026-09-13 実施)から引用しています。
- 評価器: 統一評価器
evaluate.py。時間モデルは Rust 実装(shingetsu_rs/src/model.rs)と同一 - コーパス: 公開 150,024 かな(青空文庫『こころ』『坊っちゃん』+ Wikipedia 10 記事)。私的 91,875 かなで対照
- 打鍵の数え方: 前置シフトを 1 打として数える
- 信頼区間: 40 チャンク × 200 回ブートストラップの 95%
- 順位範囲: 重み 5 セット × β 3 通り = 15 条件での最良〜最悪順位
- 月配列 2-263 の定義: eswai keyboard_analyzer 収録の
jis_tsuki.json
方法の全体像と全 56 方式の結果は 日本語入力 56 方式ベンチマーク にあります。
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